学校の先生は、日々の仕事の中で、授業だけでなく子どもとの関わりや指導、校務分掌などさまざまな業務に追われています。
そして、時にはクレームや指摘に近い問い合わせに直面することもあるかと思います。
ですが、大学を出てすぐに教員になった先生は、そういったクレームへの対処・対応の方法がわからないままに、なんとかやり取りをしていることがほとんどではないでしょうか??
実際に私も学校現場で多くの対応を見てきましたが…残念ながら上手な対応をしている先生はほとんどいません。電話がかかってくるたびに、ビクついて「…どうしよう…」とオドオドしている先生を何人も見てきました。。。
かく言う私は、企業勤め時代に研修の一環で
電話対応の基本・マナー研修・クレーム対応の基本など、
様々な研修を通して実際の現場で働いていました。
私が失敗して学んだ時もあれば、先輩や上司が対応している様を見て、多くのことを学んだこともありました。
さらに、カウンセラーとして心理学を学び、人間心理について理解を深める中で、ちょっとした工夫で劇的にクレーム対応が上手になることや、その後の人間関係も良好になることを学びました。
これからご紹介するいくつかの方法やコツを活かし、あなたの今後のクレーム対応に少しでもお役に立てれば幸いです。
Contents
そもそもクレームが生まれる原因とは 〜怒りのメカニズム〜
そもそも、
なぜクレームが起こるのか。
クレームとは何か。
そこから説明していきたいと思います。
まず、クレームとは言い換えれば、相手が怒りの感情を抱えている状態のことで、その時に起こります。何かしらの苛立ち(怒り)を感じたために、あなたに(もしくは学校に)クレームを言ってくるものです。
では、怒りとはなんでしょうか。
怒りとは「危険にさらされた」という意識・認識に起因します。ここでいう「危険にさらされた」というのは、身体的なこと・有形なことに限らず、自尊心や名誉など無形のことまで含まれます。
簡単に言えば、
- 何か目的を達成できない時
(こののままでは達成できそうにない時) - 身体・心を傷つけられた時(傷つけられそうな時)
- 侮辱された時
- 自分が損をした時
(あるいは、このままいったら自分が損をすると思った時)
こう言った時に、「怒り(イライラ)」の感情が沸き起こってきます。
※もちろん、これが全てではなく、他にも様々な要因・理由があります。
様々な要因・理由で起きてくる感情ですが、学校現場で起こるクレームの原因のほとんどは
何かしら目的が達成されない時
に起こります。
また、この怒りの感情というのは
自然発生するものではなく、
何かしら目的を達成するために
人が作り出すもの(生まれてくるもの)
です。
誰しも、何かしらの目的があり、
それを阻害される(もしくは阻害された)から
怒りの感情が湧いてくるのです。
例えば…
・子どもが言うことを聞かないからイライラした
→子どもを自分の思い通りに動かしたいと言う目的があるが、うまくいかない
・テストの点数が悪くて、我が子に対してイライライした
→テストの点数が、ある程度あるというイメージ(目的)に反した
・担任の対応に腹を立てた
→「普通であれば、こういう対応をしてくれるはずだ」というイメージ(目的)に反した対応を担任がとった
など、ある目的があって、その思い通りにいかないからイライラしてしまうのです。
ここでは、
クレームは、
何かしら目的があって生まれている
ということだけでも、覚えておいてください。
先生のクレーム対応の極意? これを意識すれば全て解決!
クレームは、
何かしらの目的があって生まれている
と書きました。
ですので、
この目的(願い)を叶えてあげればいい
と言うことになります。
もちろん、出来ること・出来ないことはありますので、それらを明確にして折り合いを見つけていくことが大切です。
そして、クレーム対応において、最も大切なことは
実は
あなたもクレームを言ってくる人も
気持ちは同じ
と言うことです。
クレーム対応の際に、とても嫌な思いを抱いて対応している人(先生)を多く見かけますが、実はそれは違います。保護者であれ、地域の方であれ、クレームを伝えてくれている人も、あなたも気持ちは同じです。
その同じ気持ちとは
お互いに
子どものことを想っている
ということです。
この想いをお互いに持っているのですが、何かのところで食い違ったり、すれ違ったりしてしまった…だから、クレーム(指摘)という形で伝えてきているだけなのです。
人はそれぞれ生きてきた環境が違います。
だからこそ、正しさは必ずしも1つではありません。
・ちょっとしたことを許す人
・絶対に何がなんでも許せない人
・これはいいんじゃない?でも、これはダメでしょ?
そんな人々の中で、つまり社会で私たちは生きています。
だからこそ、子どもに対して求めるものや伝えるもの、伝え方が違ってきて当然です。
何かクレームがあった際には、この
お互いに子どものことを想っている
ということを改めて思い返してみてください。
これを前提に置いた上で
・この人(相手)はどういう考えなのだろう…
・どうして欲しいのだろう…
(目的は何で、何をどうして欲しいと思っているのか)
・この人はどういう価値観で、私とはどう違うのだろう…
・私に出来ることで、この人(相手)のお手伝いは何かできないだろうか…
こういったことを考えながら対応することを意識してみてください。
これだけで、随分と対応の印象が変わってきます。
先生 誰でも出来る クレーム対応の具体的・基本的な4つの手順
では、実際にクレームがあった時には、どのように対応すればいいのでしょうか
クレームがあった際の理想的な手順は、4つだけです。
この4つの手順を意識して進めることが大切になります。
【基本的な4つの手順】
①心情理解・お詫び
②原因・事実の確認
③説明(解決策の提示)
④お詫び・感謝
この流れを意識して対応すれば、基本的に問題はありません。
1つずつ見ていきましょう。
①心情理解・お詫び
クレーム対応の基本は心情理解にあります。
相手は気持ちを分かってもらいたいのです。
説明がいかに丁寧であっても「話を聞いてくれない」と受け取られてしまっては、それは解決にはならず、相手の気持ちも収まりません。
心情理解・お詫びのために、まずは不快な思いをさせたことに対してお詫びをします。
クレームを言ってくる方には、何かしら感情を害した理由が必ずあります。
その「不快な思いをさせたこと」に対し、相手の立場にたって共感して、お詫びをします。
ポイントは、事実確認より前の段階では、電話の手間や不快な思いをさせてしまったことなど、何かしら迷惑をかけたことに対してのお詫びをすることです。
この段階で、下手に全ての非を認めた形で謝罪してしまうと、あとあと問題が悪化してややこしくなります。
そして、 ただ「申し訳ありません」という謝りの言葉を言うのではなく、具体的に「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」など心情理解を踏まえたお詫びをすることが大切です。
クレームから早く逃れたいと思い、とりあえず「申し訳ありません」と言っている人がいますが、それは残念ながら火に油をそそぐようなものです。仮に一旦は収まったとしても、その人への信頼は無くなったと思った方がいいです。
ちゃんと適当に言っているその場しのぎの言葉なのかどうかは、相手は分かっています。
早く終わらせたい(解決したい)気持ちはわかりますが、手順や対応の仕方を間違えると、二次クレームにもつながってしまいます。
話を聞く上でのポイント 〜この聞き方でうまくいく〜
そして、話を聞くときのポイントが、相槌(あいづち)です。
クレームを受けているときは、相槌がとても重要になります。
適度な相槌を打つことで、相手は「話を聞いてもらえている」という気持ちになり、気持ちが落ち着くようになります。
※ただし、相槌を入れすぎるのも逆効果なので、適度に。
ほとんどの場合、学校現場へのクレームは「謝罪して欲しい」というよりは、「話を聞いて欲しい」という気持ちで訴えてくる場合が多いです。もちろん、謝罪を求めている場合もありますが、まず最初は「話を聞いて欲しい」という思いであり、その次に謝罪という感じです。
まずは、相手の気持ちに寄り添い
・何がこの人(相手)を不快にさせたのか
・どういう気持ちになったのか
こう言ったことを受け止めるように、話を聞きましょう。
②原因・事実の確認
次に原因・事実確認の作業に移ります。
何が問題になっているか「事実を確認」していきます。
冷静に事実関係や状況を把握しましょう。
例えば、次のような内容を正確に把握することが重要です。
・いつ、どこでトラブルが発生したか?
・どんな事が起こって、何に対して不満を感じていらっしゃるのか?
・誰が不満を持っているのか?
・問題点は何なのか?
・あなた(自分)に対して、どうしてほしいと思っているのか?
などです。
このとき、必要なことは全て記録してください。
小さなことでも、正確な記録をとることが重要です。
相手から聞き取った断片的な話の情報を全てメモしてまとめ、整理していきます。
・相手の訴えているポイント
・確認するべきポイント
・他に関係者(登場人物)がいる場合に確認するべきこと
などを整理していきましょう。
そして、事実を確認していく上で大切なことが質問です。
クレームを伝えてきた方に対して、質問は
短く
簡潔に
そして趣旨を明確に行ないましょう。
そして、必要な人にも聞き取りを行っていきます。
③説明(解決策の提示)
状況を確認した後は、対応策を伝えます。
電話であれ直接対面しているのであれ、可能な限り迅速に反応(回答)しましょう。
・翌日事実確認をする
・担当児童に確認する
・すぐに現場に向かう
・何時までに回答する
など、一次対応の回答をしましょう。
ここでのポイントは
相手の方が望んでいる対応
をすると言うことです。
ここでズレた対応を提案してしまうと、またイライラさせてしまい長引いてしまいます。
④お詫び・感謝
説明(解決案)を伝えたあとでも、「ひとまずは終わった」と思うのではなく、再度、今回の件に対してお詫びをしましょう。
クレームを申し出たということは、学校への…あなた(担任・先生)への信頼が低下しかかっているということです。
「なんとかしてくれる」
という期待(信頼)のもと、不安を伝えてきている人もいるかもしれません。
しっかりとお詫びをして、伝えて頂いたことに一言感謝を添えましょう。
クレーム 対応がうまくできない2つの理由
クレーム対応が上手にできない人には2つの共通点があります。
お詫びできない
我慢できず、話してしまう
という2つです。
人として、困っている人がいたら、同情する事はごく普通の事です。
ですが、現実には言い訳が先行したり、ひどい時には黙りこんだり…本人に悪気がなくても、その状況によっては、相手の怒りはヒートアップしてしまいます。
では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。
お詫びができない
相手の怒りに対して、お詫びできない人を多く見かけます。
(特に、先生という職業では多いです)
まず、「困っている事実に対して、お詫びをする」ことです。
「お詫びをする」
ということは、
自分(学校)の非を全面的に認める
こととは違います。
また、ただ謝る(「すみません」という)のとは、訳が違います。
「お詫び」をすることは、
相手の「困っている点」に対して同情する
ということです。
見ていて多くの人が、この点をあまり理解できていないのかな?と感じます。
この最初の「お詫び」ができるかどうかで
クレーム対応のその後が大きく変わってきます。
相手の方は、何かしらの不快な気持ちを抱いたために、クレームを伝えてきています。
この「不快な気持ち」をしっかりと聞き取り、
「○○だったんですね、申し訳ありません。」
「○○で、不快な思いをさせて申し訳ありません。」
というように、相手の言葉を使って相手の状況を理解し、同情してお詫びをしましょう。
我慢できず、話してしまう
次に多いのが、
ついつい話をしてしまう
というものです。
相手の方が伝えてきている内容に対して、ついつい話をしてしまうのです。
まずは、最後まで相手の話を聞きましょう。
相手の話をずっと聞いていることで、相手の感情は落ち着いてきます。相手の方は自分のイライラを吐き出すことで、自然と落ち着いてくるのです。
あなたの話出すタイミングは、必ずきます。そのタイミングで色々と話せば良いのです。
あなたにも言いたいこと、伝えたいことはあると思います。
ですが、目の前のクレームを早急に解決するためには、まずはしっかりと聞くということを意識してください。
たとえ、相手が明らかに間違った認識(勘違い)があったとしても、ひとまずは最後まで聞きましょう。
そうやって冷静に話を聞くことで
「あぁ、この人は、ここで認識が違ったんだな」
「この認識がズレたから、こういう状態になったんだな」
というように、分析できます。
そうすると、あなたの話すタイミングでは
「お話ありがとうございます。今回の件では、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ですが、今伺いました話の中で、1点私どもと認識が違うなと思った点があるのです。それが…」
というように、話を真摯に傾聴し、その上で「この認識が違う」ということを正確に伝えてください。冷静な話し合いはそこから始まります。
クレーム は必ず発生する
どんな仕事においても、必ずクレームは発生してしまいます。
「クレームは必ず発生する」
という前提に立って対応することも大切です。
相手の方(保護者・地域の方など)もあなたも様々な環境で育ち、多くの人と出会い影響を受けてきました。
多種多様な考え方を持っている中で、絶対的な正解はありません。
あなたが良いと思ってとった行動も、相手にとっては不快であったり、「違う」と捉えられたりしてしまうものです。
また、モンスターペアレントと称されるような、お門違いなクレームを言ってくる人も中にはいます。
そのため、あなたがどれだけ頑張っていても、クレームを完全に無くすということは難しいことです。
だからこそ、クレームをなくすという考えよりは「クレームは必ず発生する」という前提に立ち、起こったクレームをしっかりと対応していくことで、あなたへの信頼へもつながっていくはずです。
クレーム 対応 まとめ
クレームが来ると言うのは、チャンスでもあります。
相手の方の中には
クレーム対応のイメージ
があります。
これは、
「今回の問題ではこういう対応になるだろう」
というようなもので、誰しもが持っているものです。
このイメージに合うように対応すれば問題ありませんが、ここでそのイメージを良い意味で大きく裏切る…予想を超えた対応をすれば、反対に信頼が大きくなります。
とは言え、無理に期待を上回るように意識する必要はありません。
まずは、精一杯の誠意を見せて、対応していきましょう。
今回も、最後まで閲覧いただきありがとうございました。